先進医療による腹腔鏡下広汎子宮全摘出術について

トップページ > 婦人科腫瘍・内視鏡外科 > 先進医療 > 先進医療による腹腔鏡下広汎子宮全摘出術について

先進医療による腹腔鏡下広汎子宮全摘出術について

1.先進医療とは

 当院では、患者様へ最良の治療を提供するとともに、より良い治療を開発・導入するための努力を行っています。そして従来にない新しい治療を大学病院などで導入する方法として、先進医療という仕組みがあります。

 先進医療とは、法律(健康保険法等改正平成18年法律第83号)において、「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」として、厚生労働大臣が定める「評価療養」です。 具体的には、有効性及び安全性を確保する観点から、医療技術ごとに一定の施設基準を設定し、施設基準に該当する保険医療機関は届出により保険診療との併用ができることとしたものです。

 今回ご説明させて頂く治療は、当院で子宮筋腫や卵巣嚢腫などの良性疾患および子宮体癌などに対して行っている腹腔鏡下手術を、子宮頸癌の患者様に対しても施行するものです。

 この治療は、欧米ではすでに長年にわたり数多く施行されており安全性も確立されていると考えられています。近年では、アジアでも韓国などを中心に行われております。日本での導入と普及は遅れておりましたが、平成26年12月に厚生労働省より先進医療として認定されました。

  この認定を受け、当科では、この先進医療の規定に則り、平成28年3月より腹腔鏡下子宮頸癌手術を開始いたしました。

2.子宮頸癌に対する手術:開腹手術と腹腔鏡下手術

 子宮頸癌の標準的治療は、癌の性格および進行度により 手術療法および放射線治療があります。手術療法には①広汎子宮全摘術(+両側付属器摘出術)②広汎子宮全摘術(+両側付属器摘出術)+骨盤リンパ節郭清術) ③広汎子宮全摘術(+両側付属器摘出術)+骨盤リンパ節郭清術+傍大動脈リンパ節郭清 のいずれかを行うこととなっています。

 日本では一般的には上記手術治療は開腹術で行われていますが、近年の技術・機器の進歩とともに、より体への負担が少ない腹腔鏡で行うことが可能になってきました。婦人科領域において腹腔鏡下手術は子宮筋腫や卵巣嚢腫などの良性疾患に対しては比較的早くから保険適用されており、その利点は実証されていますが、悪性疾患に対しては現時点では子宮体癌しか保険適用されていません。しかし子宮頸癌に対する手術でも腹腔鏡下手術の利点も大きいと考えられます。例えば開腹術では15~20cmの切開を必要としますが、腹腔鏡では5-12mmの数か所の小切開で行います。術後疼痛の軽減・術中出血量の減少・入院期間の短縮・早期社会復帰などがみられ、患者様のQOL(生活の質)にも著しい成果があると考えられます。

 海外などのこれまでの報告によれば、手術の成功率や術後診断の正確さ・予後についても開腹手術に劣らないと報告されています。そのため、日本でも将来的には標準治療として導入されると考えられます。

3.腹腔鏡下手術の特徴

 早期の子宮頚癌に対して腹腔鏡下に広汎子宮全摘術+両側付属器摘出術、骨盤リンパ節郭清術を行い、従来の開腹手術より低侵襲手術を行います。腹腔鏡下手術で行うため、創か小さく術後の創痛が少なく、早期離床と退院が可能となります。

 手術方法は、まず臍内に筒(5mm)を挿入し、そこから送気装置を使って腹腔内に炭酸ガスを送り、手術に必要な操作空間や視野の確保を行います。腹腔鏡を挿入して腹腔内を観察し、腹壁より腹腔鏡下手術用の細い筒(5-12mm)数本を挿入して、その筒を通して細長い道具類(さまざまな種類の鉗子、電気メス、超音波メス、吸引洗浄管など)を挿入し手術を行います。

 子宮と卵巣は最後は膣から体外へ取り出し、リンパ節は袋に回収した後に筒から体外へ取り出します。

 もし、腹腔鏡手術がうまくいかないと考えられた場合は、術中において直ちに従来通りの開腹手術など必要な術式に変更します。

 合併症がなければ手術時間は4-6時間。入院期間は約1週間です。通常は術後2-3週間で社会復帰が可能です。

4.安全性と起こりうる合併症

 今回の手術に使用する手技と器具は、従来から他の腹腔鏡手術に使用されている既存のものであり、新しく開発したものではありません。本手術は日本産婦人科腹腔鏡技術認定医、日本婦人科腫瘍学会専門医が担当執刀いたしますので、手術に対しては、充分な経験と習熟を有しております。しかし、どのように安全に計画された手術でも合併症が起こる可能性があります。

 従来より報告されているこの術式における合併症には主に以下のものがあります。①大血管損傷による出血:開腹術を必要とする血管損傷は0.4~10%と報告されています。出血が多くなった場合、輸血を要したり、止血のために血液を原料とする製剤を使用する場合があります。十分チェックされた輸血や止血剤を用いますが、まれに感染症の危険性があります。②尿路系、腸管損傷:子宮・卵巣・リンパ節およびその周囲を必要範囲で摘出しますので、まわりの膀胱、尿管、腸などの損傷を起こすことが稀にあります。尿路系の損傷は腹腔鏡下手術でやや多いという報告があります。これらの損傷が起こったときでも、多くは腹腔鏡で修復できますが、困難な場合は開腹術に移行します。③感染:骨盤内の感染のため長く抗生物質治療を必要とすることもあります。④腸閉塞:術後に癒着のため腸管の動きが悪くなる(腸閉塞)ことがあります。これは腹腔鏡下手術の方が少ないと言われています。⑤肺動脈血栓症:術中、術後にまれに肺動脈血栓症を生じ重篤な状態になることがあります。それに対して予防的な処置を講じますが希な発症があります。これは、従来の良性疾患を対象とした腹腔鏡下手術と特に大きく変わるものではありません。⑥リンパ嚢胞、下肢浮腫:腫瘍の広がりを防ぐためにリンパ節を切除した場合には、骨盤内にリンパのう胞ができたり、下肢にリンパ液がたまり、むくんでくることがあります。⑦癌の播種・転移:非常に稀ですが器具の出し入れに用いるトロカー(筒)の刺入部や手術部位周囲に転移を認めたという報告があります。多くは病期が進んだ浸潤癌の場合であり早期子宮頸癌での危険性は低いものと考えます。手術時には癌が周りにこぼれないように、臓器やリンパ節を袋に入れるなど取扱には十分注意いたします。⑧膀胱機能障害:子宮頸癌は膀胱に近い場所にできるため、手術時に膀胱神経に影響が出ることがあります。今回予定している手術は膀胱神経温存手術であり、障害は一般的には少ないはずですが、時に術後に排尿排便障害がおこり、まれですが長期の自己導尿が必要になる場合もあります。⑨手術時間の延長:従来の腹腔鏡下手術と比較して手技が複雑であるため手術時間が若干延長されることが予想されますが、事前の心肺機能検査で問題が無ければ手術時間の延長による影響は少ないと考えられます。なお、長時間の腹腔鏡手術時にコンパートメント症候群と呼ばれる合併症がまれに起こることが報告されています。これは下腿などが長時間手術で圧迫されることで組織内圧が上昇して、細動脈の血行障害を引き起こし、筋腱神経組織が壊死〈えし〉に陥る障害です。 重症化すると、機能障害を起こすことがあるので、最大限の予防処置を講じ、万一発症が疑われた場合には早期に最善の治療を行います。

 

以上をまとめると下記のようになります。

メリット

1)術後の疼痛が軽減され、回復が早い

2)傷が目立たなくなる(整容的効果が得られる)

3)腹壁切開に伴う合併症の回避(創直下への癒着による術後腸閉塞、創感染、

腹壁ヘルニアなど)

デメリット

1)手術時間の延長の可能性

2)腹腔鏡下手術特有の合併症の可能性

3)途中で開腹手術へ変更の可能性

 

4.費用の負担について

 先進医療の自己負担が約50万円必要です。さらに保険診療分の自己負担(通常は高額医療控除の適応となり、自己負担額は約10万円)が必要で、費用負担は合計約60万円です。

 但し予定外の手術の追加が必要となったり、従来どおりの開腹術に移行した場合、また術後の合併症などに関しては通常どおりの保険診療で行いますので、健康保険で定められた自己負担分を患者様に負担していただくことになります。

(婦人科内視鏡外科 診療教授 北)

教授の挨拶

当院で出産をお考えの方へ

関西医科大学総合医療センター

関西医科大学香里病院

関西医科大学

関西医科大学附属病院

ページの先頭へ

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 産科学・婦人科学講座

電話 072-804-0101(病院代表)
FAX 072-804-0109

Copyryight © Department of obstetrics and gynecology,Kansai Medical University All rights reserved.