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上部消化管

食道静脈瘤 内視鏡の治療

当グループでは、食道・胃・十二指腸・大腸における内視鏡診断、治療とそれに係わる臨床研究やトランスレーショナルリサーチを幅広く行っている。さらに若手医師の内視鏡手技習得や学位取得の為の指導にも力を入れて取り組んでいる。

良性疾患では、難治性胃食道逆流症に対する粘膜切除術(anti-reflux mucosectomy)、インピーダンスモニターによる病態解明を目指す臨床研究に取り組んでいる。慢性肝炎や肝硬変を背景とした食道・胃静脈瘤に対する内視鏡治療(内視鏡的静脈瘤結紮療法EVL・内視鏡的静脈瘤硬化療法EIS)は、全国有数の実績を有しており、超音波内視鏡(EUS)用いた術前の血行動態の把握による最適な治療法を選択や、静脈瘤の性状に応じた硬化注入剤(オルダミン、ヒストアクリル、エトキシスクレロール)の使い分けについて、検討を行っている。

上部内視鏡 検査・治療風景

腫瘍性疾患は、食道癌、胃癌、大腸癌に対する内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD)を多数行っており、処置困難症例、相対的適応病変に対する診断的治療も積極的に行っている。近年増加傾向である表在型十二指腸上皮性腫瘍に対しても腹腔鏡・内視鏡合同手術(D-LECS) やUnderwater EMR(UEMR)など、病変に応じた治療を行っており、特に十二指腸乳頭部に近接する腫瘍に対するD-LECS治療は国内専門学会において、高い評価を得ている。若手医師に対する指導に関しては、豊富な症例を基盤とした実践的なトレーニングのほかに専用のESDトレーニングモデルを用いた基礎トレーニングにも力を入れており、無理なくESDの手技習得が可能な環境を整えている。大腸腫瘍に対しては、ESDに加え、新規治療法であるCold snare polypectomy(コールド・スネア・ポリペクトミー)を積極的に行っており、有用性や合併症、困難症例についての臨床研究を行っている。進行癌に対しては、ステント挿入、胃瘻造設、コロレクタルチューブ、イレウス管挿入等、多岐にわたる内視鏡治療を行っており、それらの症例データーベースを用いた様々なコホート研究を行っている。
腫瘍性病変の内視鏡画像診断に関して、新規画像強調内視鏡であるTexture and Color Enhancement Imaging(TXI)観察を用いた腫瘍病変の質的診断・病変範囲診断能における有用性を様々なデザインの臨床研究により検証している。大腸腫瘍に対しては、内視鏡画像を人工知能(AI)で解析し,検査中にリアルタイムでポリープの種類を高精度に判別することで医師の診断を補助する内視鏡画像診断支援システムを導入しており、その有用性を評価する臨床研究を行っている。

内視鏡治療グループ

当教室では消化管の炎症・腫瘍疾患の豊富な症例を基盤とした分子疫学的研究に積極的に取り組んでおり、バレット食道~食道腺癌、慢性胃炎~胃癌など、消化管における炎症~発癌におけるgenetics/epigenetics/immunogeneticsの相互作用をテーマに、内視鏡により切除した腫瘍・前癌病変における遺伝子変異、DNAメチル化異常、マイクロRNAの発現状況、免疫学的多様性について、分子生物学、バイオインフォマティクス的手法を駆使し解析を行っている。また、近年様々な疾患への関与が報告されている細菌叢について、腫瘍内細菌叢と宿主の体細胞性遺伝子変化の関連をテーマに解析を進めている。臨床的有用性が期待されるリキッドバイオプシーに関しては、内視鏡検査時に通常は廃液として破棄される消化管洗浄液中の宿主や細菌ゲノムの解析を行い新規バイオマーカーとしての有用性を検討している。