■腹膜平衡試験(PET)について

腹膜平衡試験(Peritoneal Equilibration Test)

[目的]

①腹膜の透過性を知り、腹膜炎の発症リスクを予測します。
腹膜クレアチニン透過率(D/P Cr)が経時的に上昇し,「High」が12か月以上持続する例では,高度の腹膜の劣化が進行していると判断して腹膜透析の中止を検討します(腹膜透析ガイドライン2009)
透析効率を評価し、現在の透析液量や交換回数でよいか検討します。
適正透析量として、残存腎機能と併せて週あたり尿素除去率(weekly Kt/V)を、最低値1.7を維持することを目標にします。

[方法]

腹膜透析液の排液と採血のみを使用する、簡単な検査です。PETは透析液中のクレアチニンがどのくらいの速度で膜を介して透析液に引き込まれるか(D/P)を見て、腹膜の透過性を評価します。一方、透析液中のブドウ糖はどれぐらいの速度で血中に拡散するかを見ても、腹膜透過性をしることができます(D/D0)。

プロトコール ダウンロード

事前準備

ダイアニール 2.5% 2L  ツインバッグ(温めておく)→PET検査用
ツインバッグ→PET終了時用(日中貯留しない場合はYセット)
注射針 排液採取・・・23G   採血・・・21G
病院用検査スピッツ 排液用3本・血液生化学用1本・血糖用1本

実施条件

透析液: ダイアニール2.5
ペリセート400NL
注液量: 2.0L
貯留時間: 4時間
注液速度: 400ml/2分
注液時体位: 仰臥位
排液時間: 20分間以上
排液時体位: 立位又は座位


注意点

①導入時 カテーテル挿入後1か月以内の腹膜機能検査は、必ずしも患者の腹膜機能を反映しないので,
 導入後4週間以降に腹膜機能検査を行うことを勧める。
②腹膜炎 腹膜炎後4 週後以降に腹膜機能検査を行うことを推奨する。
③エクストラニール PET前に長時間貯留すると,検査結果がブドウ糖透析液のみの使用時に比して,
 透過亢進側へシフトすることがある。
④体格が小さく貯留許容量が少ない患者様でも、本試験4時間の際に最低1500ml貯留しないと
 結果を算出できない。

  
図 D/P 値を基準にしたPETの4つのカテゴリーの判定法

図左 クレアチニン除去率 D/P 4時間貯留の間にクレアチニンがどれぐらい血漿(P: plasma)から透析液(D:Dialysate)へと移動したかを見ています。赤色の部分は、腹膜透析液に短時間で血中からクレアチニンが抜けいていることを示し、透過性は高い(High)と考えられています。
図右 ブドウ糖吸収率D/D0 4時間貯留開始前(D0)において腹腔内にある透析液のブドウ糖濃度を1として、経時的(D)でどれぐらい減少するかの比率を計算しています。赤色の部分は、腹膜透析液に短時間で腹腔内透析液ブドウ糖が速やかに血中へと拡散し、透過性は高い(High)と考えられています。
  

結果の解釈と対応

PETでHighの患者様では,透析液中のブドウ糖の吸収が速いため,CAPDだと除水機能が低下しやすく,APDを用いて短時間で頻回に交換したほうがよい。
一方,Lowの患者様では,除水は取れるものの,尿毒症物質の除去が不足するため,貯留する透析液の量を増やすことが望ましい。


D/P の算出の原理