会長挨拶

このたび,第29回日本静脈麻酔学会を大阪府豊中市の千里ライフサイエンスセンターで開催させていただくことになり,大変光栄に存じます.COVID-19の蔓延で学会が開催しにくい昨今の状況ですが,本学会は一昨年も昨年もon siteで開催してきました.本年もon siteで開催したいと考えています.

今回の学会のテーマは「PK_PDを活用しよう」と致しました.静脈麻酔では麻酔薬や鎮痛薬のPK/PDを理解することは適切な静脈麻酔を行う第1歩です.TCI(target controlled infusion)と脳波モニタリングは静脈麻酔の両輪ですが,PK/PDはTCIの基礎です.

そこで,今回の学会では会長講演としてコンパートメントモデルの微分方程式を活用した新たなTCIのアルゴリズムに関してお話する予定です.現在日本で利用できるTCIポンプはプロポフォール用のディプリフューザーのみですが,ヨーロッパなどでは種々の麻酔薬や鎮痛薬のTCIが行えるOpen TCIポンプが主流になっています.Open TCIポンプでは血中濃度を目標とする血中濃度TCIだけでなく,効果部位濃度を目標とした効果部位濃度TCIも行えます.これまで日本にもOpen TCIポンプを導入するように学会として働きかけていましたが,なかなか実現していません.その理由も踏まえて,この問題を解決できるアルゴリズムを考案し,いくつかのシリンジポンプ用のTCIソフトウェアを開発しました.残念ながら2013年の法改正によってこのようなソフトウェアは「未承認医療機器」として扱われるため簡単に配布したりすることも規制されています.現在のところ私が関西医科大学附属病院で臨床使用 することに対しては病院から許可を頂いておりますので,患者さんの同意が得られた場合にはこのソフトウェアを使用してプロポフォールだけでなくレミマゾラムやレミフェンタニルのTCIをおこなえるようになっています.これらについてお話したいと思います.

特別講演につきましては関西医科大学整形外科教室の安藤宗治教授にお願いしました安藤教授は脊椎外科が専門で,脊椎手術の際の神経モニタリングについて研究しておられます.MEPやSEPなどの神経モニタリングが必要な手術ではTIVAが基本ですのでこの学会にピッタリかと思います.興味深い話が聞けるものと期待しています.

本学会は年末に近い慌しい時期に開催されますが,11月26日は静脈麻酔について熱い議論が交わされるものと思います.参加される多くの先生方に実りある学会になれば幸いです.多くの皆様のご参加をお待ちしております.

2022年11月吉日
第29回日本麻酔静脈麻酔学会
会長 萩平 哲
(関西医科大学 麻酔科学講座 診療教授)

大会事務局

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