1966年開講の本学の脳神経外科学講座は、東京大学、京都大学に次いで日本で3番目に古い伝統のある脳神経外科学講座です。私は令和6年4月より、第5代主任教授として本講座を担当しております。本講座の大きな特徴として、家族的な雰囲気であるということが挙げられます。スタッフの人数が大所帯でないことと、人柄がよいスタッフが集まっていることがその理由として考えられます。これらのスタッフが臨床、研究、教育を分担しておこなっています。 臨床面では手術なども、後期研修医の早い時期からたくさん経験させるようにしています。
難しい手術でも、優秀な上級医の指導のもとにできるところまでやってもらうようにしています。年間約400例を超える手術は緊急手術(脳血管障害、外傷など)と予定手術(脳腫瘍、小児奇形、水頭症など)がほぼ半々の割合であり、緊急手術は研修医を中心に若手の先生が術者になることが多く、予定手術もできるところまでは若手の先生にやってもらう方針にしています。毎朝8時30分から総合医療センター脳神経外科と合同でおこなうWEB症例カンファレンスでは、すべての新入院患者について、各領域のエキスパートが集まって、診断、治療方針を検討しています。これに毎日参加することによって、脳神経外科疾患について幅広くかつ非常に高いレベルの知識と考え方が身に付きます。脳血管障害の手術、脳血管内治療、脊椎脊髄の手術も国内のトップレベルの医療機関にて学ぶ機会を持ってもらうようにしています。研究面では、研究医長、大学院生を中心に、膠芽腫をはじめとする悪性脳腫瘍の基礎研究およびトランスレーショナルリサーチを他の臨床および基礎の教室と共同でおこなっています。また、小児の先天異常である二分脊椎症や水頭症、脳形成障害、もやもや病の全ゲノム遺伝子解析、およびゲノム編集技術を用い変異遺伝子の病原性探索、発症原因解析を実施しています。私たちと一緒に仕事をしてみたいと思われる方は是非ご一報ください。
脳神経外科研修指導責任者
脳神経外科学講座 教授
埜中 正博
脳神経外科は多彩な領域
全身血管の病変をカテーテルで治療する血管内手術、脊椎や脊髄の病変を治療する脊椎脊髄手術、頭蓋底の病変を鼻から治療する内視鏡手術やガンマナイフやサイバーナイフなどの定位放射線治療をはじめ、悪性脳腫瘍の化学療法や分子標的療法、てんかんの治療、脳梗塞の治療、認知症の治療、リハビリテーション、脳梗塞や脊髄損傷に対する神経再生治療にいたるまで、脳神経外科でカバーしています。
顕微鏡下の脳の手術は脳神経外科手術の基本
脳神経外科の手術はひとの命だけでなく、神経機能も救う手術でなければなりません。難しい良性腫瘍の手術、悪性脳腫瘍の手術、血管の手術は日本脳神経外科学会指導医が、若い医師の指導にあたっています。
内視鏡手術は今や脳神経外科で欠かせない手術
脳神経外科領域では他の領域以上に低侵襲の治療が求められています。その主役を担うのが内視鏡手術です。神経内視鏡技術認定医が指導にあたっています。
小児脳神経外科はオールマイティー
小児脳神経外科は小児脳腫瘍、小児奇形、小児脳血管障害から小児脊髄疾患まであらゆる領域をカバーしています。
脊椎脊髄手術は需要が多い手術
高齢化社会にともなって、脊柱管狭窄症の症例が増加しています。米国では脳神経外科手術の約半数は脊椎脊髄手術と言われています。日本脊髄外科学会認定医が指導にあたっています。
血管内手術は今や脳、頸部血管治療の主役
従来の開頭手術では困難な血管病変の治療が血管内手術で短時間に低侵襲でおこなわれるようになっています。日本脳血管内治療学会指導医が指導にあたっています。
悪性脳腫瘍の化学療法、分子標的療法はこれから伸びる分野
悪性脳腫瘍に対する新しい抗がん剤、分子標的治療薬が開発されてきています。日本癌治療認定医機構暫定教育医が指導しています。
救急医療と脳神経外科は表裏一体
頭部外傷、脊損、脳卒中など、救急医療は関西医科大学脳神経外科では特に力をいれています。日本救急医学会指導医、日本脳卒中学会専門医が指導にあたっています。専攻医の過程で救急救命センターへの出向期間を設けており、脳神経外科医として必要なスキルである救急疾患への対応力を培っていただきます。