Research研究紹介

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①基礎研究

1. 敗血症時の血行動態および酸素代謝異常に関する研究

ウサギ可変心拍出量モデルを用いて、個体の酸素運搬量-消費量関係を解析して様々な病態の本質を追究する生理学実験系を、学舎8階救急医学実験室に備えています。最近の成果では、ヒト敗血症性ショックを模倣した病的メディエータ発現による末梢血管抵抗減弱型ショックモデルを作成し、外的に血管拡張メディエータを投与して同等の末梢血管抵抗減弱を作成した場合と比較して、前者には酸素運搬量減少依存性に酸素消費量が減少するpathological O2 supply dependencyを来すが、後者では酸素消費量は酸素運搬量の多寡にかかわらず一定値を維持することを証明した論文があります。すなわち、病的な酸素消費量減少は、単なる血管抵抗減弱ではなく、病的メディエータが発現する部位での血流分布異常によって生じることを示唆した報告です。(日本救急医学会の英文機関誌:Acute Medicine and Surgeryに掲載)

2. 虚血再灌流障害に対する治療薬の開発

当教室では腸管の虚血再灌流障害を軽減させることのできる薬剤の開発を行っています。一般的に虚血が起きると組織障害が始まり、その後血流再開が起きた際に障害が顕在化することが知られている。主にその障害の程度は虚血時間に依存し、その障害は多くの臓器で起こります。血流遮断と再開通の際に生じる障害のことを特に虚血再灌流障害(Ischemia Reperfusion injury)と呼んでおり、脳梗塞や心筋梗塞の治療後にも起きることが知られています。
我々は他の動物モデルや心筋・脳の虚血再灌流の障害軽減に効果があると報告されている薬剤をマウス腸管虚血再灌流障害モデルに使用することでその障害の軽減が可能かどうかを検討しています。腸管虚血再灌流障害モデルマウスに対し薬剤を投与し、腸管組織HE染色の組織障害スコア、血清サイトカイン(TNF-α、IL-6)、補体や抗体(IgM)の免疫染色などを用いて群間比較を行っています。実際の臨床の分野で患者の予後を左右する腸管虚血再灌流障害を軽減する方法や薬剤は確立しておらず、本研究は救急・集中治療の分野で患者の予後改善につながり、新たな治療法の選択肢となりえます。

3. 重症熱中症モデルに対する2-methyl-2-thiazolineの効果の検討

熱中症に伴う播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)、多臓器不全の進行には、全身性の血管内皮障害や細胞死が関与します。過剰な炎症性サイトカインの産生とそれに伴う血管内皮障害、微小循環障害から多臓器障害が進行し予後に重大な影響を与えます。ショックや臓器障害が進行する原因である炎症カスケードを制御し、根本的に病態を改善する抗炎症療法は多年に渡り研究されてきました。しかし全身炎症反応を制御し生存転帰を改善させる治療法はいまだ十分に確立されてはいません。本研究の目的は、重症熱中症に対する新たな治療戦略として、チアゾリン類恐怖臭(Thiazoline-related fear odors: tFOs)の1つである2MT(2-methyl-2-thiazoline)投与の有用性を評価することとしました。動物において2MTは生体内では抗炎症作用を有することが明らかにされており、重症熱中症ラットモデルに2MTを投与し、血清サイトカイン値や各臓器における組織障害スコア、白血球浸潤、血管内皮細胞障害について評価を行います。実際の臨床の分野で患者の予後を左右するDICや多臓器不全の進行を軽減する方法や薬剤は確立しておらず、本研究で結果を得ることができれば、救急・集中治療分野での患者の予後改善につながり、新たな治療法の選択肢となリます。

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