関西医科大学附属病院では、様々な分野の知識・技術を持った、専門・認定看護師が活躍しています。各領域の専門性を活かして、臨床現場において看護職員や患者さんに専門的なケアの実施や教育を行っています。
専門・認定看護師の活動は会議でお互いに共有し、さらなる看護の充実を目指して組織横断的に活動しています。
栄養サポートチーム(NST)
栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)とは、医師・看護師・薬剤師・管理栄養士などで構成されたチームであり、診療科を問わず患者に適切な栄養管理に取り組んでいます。看護師の役割は、食事や排泄の状況の継続的な把握をし、治療経過などと複合してアセスメントを行い、低栄養や栄養障害を引き起こすリスクのある患者の抽出をします。患者の具体的な栄養管理方法について他のメンバーと検討する際は、病棟看護師が実践可能な管理方法なのか安全面も含め意見します。また、患者の生活状況も踏まえ最善とされる方法を検討しています。対象患者のラウンドを週1回行いますが、日々病棟看護師との連携し患者の変化が捉えられるよう取り組んでいます。また、看護師を含めた医療職者へ栄養管理に関する教育も行っています。栄養状態が悪いと治療が受けられないことや合併症を引き起こすリスクが高まるなど、患者にとって不利益が生じます。当院は、全病棟で週1回NSTカンファレンスを開催しており、患者がより良い治療を受け、回復へと繋げられるよう院内全体で栄養管理に取り組んでいます。
皮膚排泄ケア
皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)は、スキンケアスキルを基に、創傷ケア(W)、ストーマケア(O)、失禁ケア(C)を専門としています。褥瘡対策チーム(予防ケア、局所ケア)、排尿ケアチーム(排尿ケアの自立)のメンバーとして日々ラウンドを行っています。また、看護外来として、ストーマ外来を行っています。当院では年間約120例のストーマ造設手術が実施されています。外来から患者に関わることで安心して手術を受け、早期にストーマケアの手技習得が行えるよう支援しています。リソースナースとして、高度医療を受ける患者が、医療ケアニーズを持ちながらも日常生活の自立が出来るよう、部署看護師と共にケア方法を考えることで、アセスメント力、ケアスキルの向上に寄与しています。皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)は、スキンケアスキルを基に、創傷ケア(W)、ストーマケア(O)、失禁ケア(C)を専門としています。WOC領域は、看護技術の有効性、費用対効果が認められ、診療報酬算定要件で認められています。例えば、褥瘡対策チーム 、排尿ケアチーム、ストーマ外来など、看護の専門性を発揮し院内を横断的に活動しています。WOC領域は、患者のADLに関することや、排泄ケア、スキンケア、創傷ケアなど、看護師が日々のケアの中で直面することが多いことが特徴です。リソースナースとして部署看護師と共にケア方法を考えることで、アセスメント力、ケアスキルの向上に寄与しています。
手術看護
手術室看護認定看護師は、現在2名で活動しています。手術看護認定看護師の役割は、患者の手術侵襲を最小限にし、二次的合併症を予防するための安全管理(体温・体位管理、手術機材・機器の適切な管理等)、 および、周手術期における継続看護の実践です。日々の実践における他看護師への指導や、他職種・他部門を含めた手術看護に関する相談業務も責務として対応しています。手術看護認定看護師教育課程における、臨床実習施設として、教育的なサポートにも携わらせていただいています。
精神看護
精神的不安定になっている人や精神疾患のある人に対して、精神看護の知識・技術(面接、リラクゼーション、精神状態の把握と精神科へつなぐことなど)を使って、入院生活に適応ができることや当該科の治療・看護が進められるよう支援しています。身体と心の不調を患者さんと一緒に見ていきながら、セルフケアの力を取り戻していく取り組みをしています。また、病棟看護師・外来看護師、ソーシャルワーカー、医師など多職種で連携し支援することもあります。
糖尿病看護
慢性疾患である糖尿病は、糖尿病合併症予防と良好な血糖コントロールが重要です。糖尿病の治療は時代とともにめざましく発展していますが、糖尿病を完全に治す治療は確立されていません。そのため、食事療法、運動療法、薬物療法と患者さん自身が健康的な生活を築き、歩んでいけるように、生涯にわたる治療やセルフケアを必要とします。糖尿病看護認定看護師とは、糖尿病とともに生活をしている人が自分らしく生活できるように血糖コントロールや社会生活の支援を行う看護師のことです。外来通院での糖尿病治療、糖尿病教育入院や初めて糖尿病と診断された方への支援を含め、医師、栄養士、糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師とともに、その人らしい生活を営むことができるように支援することをこころがけています。また当院では、1型糖尿病や妊娠糖尿病、膵臓疾患関連の糖尿病、内分泌疾患関連糖尿病、免疫チェックポイント阻害薬関連の糖尿病など、特殊な病態(病状)を抱える患者さんと関わる機会が多いため、疾患や治療に関する最新の情報に常にアンテナを張り巡らせ、自己研鑽に励むことも必要です。具体的な活動内容としては、外来においてインスリン療法導入時の指導・フットケアを通じて糖尿病足病変の予防ケアを日々行っています。糖尿病性腎症2期以上の患者さんに対して、医師、看護師、栄養士、健康運動指導士が連携し透析予防のための病期に合わせた指導を行っています。
不妊看護
女性診療科外来と総合周産期母子医療センターに各1名所属しています。不妊や不育に悩まれるご夫婦や不妊治療を希望されるご夫婦がリプロダクティブヘルス・ライツの概念から、自分らしく納得した自己決定が出来るよう情報提供や相談を行っています。不妊治療中の悩みには個別で対応しています。現在不妊治療後に妊娠を体験する方が多くなり、妊娠中から産褥期における不安の軽減、母親としての役割を獲得する過程を見守り、支援しています。将来の不妊予防やがん治療前の妊孕性温存のご相談もお受けします。
心不全看護
心不全は、急性増悪しながら進行していく病です。慢性心不全看護認定看護師は、できるだけ心不全患者さんが急性増悪なく、症状が安定した状態で長く生活できるよう個別的な支援を行っています。毎週金曜日に循環器外来の診察室で心不全看護外来を実施しています。現在2名の慢性心不全看護認定看護師が担当しています。看護外来では、患者さんの心不全管理に向けて、セルフモニタリング指導や療養生活指導を行っています。患者さんの関心事に耳を傾け、心不全と付き合いながら生きがいや目標をもって生活が継続できることを大事にしています。常に循環器医師とは連携し、また、介入困難な患者さんに対しては、心不全多職種カンファレンスなどで多職種の意見を取り入れながら患者さんの支援の方向性を見出しています。
RST呼吸ケアサポートチーム
RST(respiratry support team:呼吸ケアサポートチーム)は、人工呼吸器を装着した患者を対象に、医師、看護師、理学療法士や臨床工学技士などの多職種が集まって活動するチームである。RSTの最大の目的は人工呼吸器からの早期離脱を支援することである。具体的な活動内容は、呼吸ケアチーム回診を行い、人工呼吸器の離脱を妨げる要因のアセスメントを行い、適切な人工呼吸器設定となっているかの確認や、安全管理が守られているかどうか、人工呼吸器関連の合併症予防が適切に行われているかの確認などを行い、その確認したことを臨床の現場に提案や提言として還元し、より適正な人工呼吸管理をサポートしている。RSTに参加する看護師は、専門の研修を受講した人工呼吸管理及び呼吸ケアに精通した看護師であることが求められ、当院では、急性・重症患者看護専門看護師、クリティカルケア認定看護師、救急看護認定看護師、特定看護師など11名体制で連携し、細やかなサポートを行っている。
がん看護(化学療法・緩和)
がん看護部門には、がん性疼痛看護認定看護師、がん薬物療法認定看護師、緩和ケア認定看護師、がん看護専門看護師が在籍しています。それぞれ外来化学療法センターや緩和ケアセンターで活動しています外来化学療法センターでは、抗がん剤治療を受ける患者さんのセルフケア支援や副作用のマネジメントの他、患者さんが安心して治療を受けられるための投与管理などをスタッフと共に行っています。また、患者さんにとって外来化学療法センターは、抗がん剤治療を受けるだけではなく、治療効果や今後の治療ついての話がされる場所でもあります。私たちは医師の診察に同席して、医師と患者さんを繋ぎ、納得のいく意思決定を支援するとともに、患者さんやご家族の不安が和ぐよう支援しています。緩和ケアセンターでは、患者さんとご家族の苦痛を和らげるための支援を医師、臨床心理師、薬剤師、医療ソーシャルワーカーなどの他職種と協働して行っています。がんと診断された時から生じる患者さんとご家族の悩みは幅広く、その分、実践も身体・精神症状の緩和、支持療法、意思決定支援、カウンセリング、家族・遺族ケア、地域連携等と多岐に渡ります。また、がん相談外来やリンパ浮腫外来などの看護外来を担当し、高い専門性をもった支援も行っています。大学病院においてがん治療と緩和はセットで行われるものです。患者さんがどちらからもしっかりと支えられていられるよう、私たちは日々活動しています。さらに私たちのかかわりの対象は、患者さん・ご家族だけに留まりません。ベッドサイドのケア充実のために、院内看護師向けに研修会を定期開催したり、地域住民ががん医療に理解を深められるように市民公開講座を開催したりと、様々な取り組みを行っています。
感染管理
感染管理認定看護師は、感染制御部に所属する医師、薬剤師、臨床検査技師、事務と協働し、患者と職員を含めた院内全員を対象に感染管理を行っています。感染を未然に防ぐことができるよう、施設内をラウンドし、感染対策の教育、抗菌薬の適正使用、薬剤耐性菌の管理、医療関連感染サーベイランスなどを行っています。新型コロナウイルス感染症のパンデミック以降、感染管理の重要性はますます高まりました。自施設の感染管理だけでなく、地域における感染対策の向上が求められ、近隣医療施設や保健所と連携しています。このように、施設内の感染管理だけでなく、近隣医療施設からのコンサルテーションや現場ラウンドを行うなど、院内外に幅広く活躍しています。
救急看護
救命センターに搬送される患者さんは、急病や事故により突然心身ともに危機的な状態に陥ります。救急看護の知識や技術を駆使して、刻一刻と変化する患者さんの状態を予測し迅速に対応することはもちろん、患者さんとご家族が少しでも安心して治療を受けることができるように不安な気持ちに寄り添い支援することが私たちの仕事です。また、救急看護を必要とする場は院内だけに限りません。発災時にはDMAT(災害派遣医療チーム)として災害現場に駆けつけ、医療活動を行います。東日本大震災や熊本地震では臨時医療施設の開設や病院間搬送の支援を行いました。当院は災害拠点病院の役割を担っており、平時から災害研修や学習会の開催、医療資機材の整備を行い、いつ起きるかわからない災害にも即時対応できるよう準備を整えています。2019年からはドクターカーへの同乗も開始となりました。患者さんとその家族へ、病院到着前から適切な救急看護が提供できるよう、ドクターカーナースの育成にも取り組んでいます。
新生児集中ケア
新生児集中ケア認定看護師として、総合周産期母子医療センター内で活動しています。新生児は母体の胎内環境から、体外環境に適応するために劇的な変化をしている時期です。早産や低体重、疾患を持ったハイリスク新生児には、より細やかなケアが必要になります。そのような状態にある新生児のサインを見逃さないアセスメントと、発育を促進させるためのケア、そのご家族の親子関係形成のための支援を行っています。また、よりよい周産期医療を提供できるよう年数回、新生児蘇生法の講習会を開催し、他職種と医療チームとして協働できるように支援しています。