• TOP
  • 膝関節外科

専門領域のご紹介

膝関節外科

膝の痛い人はとても多く、変形性膝関節症の患者数は国内で2530万人と推定され、40歳以上で男性42.6%、女性62.4%とかなり高い有病率となっています。
当院では、膝の変性疾患(変形性膝関節症等)の治療を中心に、膝の外傷(半月板損傷・前十字靭帯ACL損傷等)に対する手術的治療を行っています。

スタッフ:左から村田、大野 (スタッフ:左から村田、大野)

変形性膝関節症に対する治療

まずは、内服・下肢筋力訓練・ヒアルロン酸の関節内注射・足底板等の保存療法を行います。
保存加療の効果のない患者様に手術加療をお勧めしています。

手術治療には、下記のような種類があり、

  • 高位脛骨骨切り術 High Tibial Osteotomy (HTO)
  • 内側開大式高位脛骨骨切り術 Open Wedge HTO
  • ハイブリッド外側閉鎖式高位脛骨骨切り術 Hybrid Closed Wedge HTO
  • 遠位大腿骨骨切り術 Distal Femoral Osteotomy (DFO)
  • 人工膝関節全置換術 Total Knee Arthroplasty (TKA)
  • 人工膝関節単顆置換術 Unicompartmental Knee Arthroplasty (UKA)

それぞれに特徴があり、年齢・活動性・関節の変形の程度を考慮し、患者様と相談の上、手術方法を選択しています。
それぞれの手術方法を説明します。

  • 高位脛骨骨切り術 High Tibial Osteotomy (HTO)

    内反型(O脚)の変形があり、比較的年齢が若く、活動性の高い(スポーツをする)、可動域良好で、高度の肥満ではない患者様が適応となります。
    脛骨(すねの骨)の近位部を骨切りし、内反(O脚)となった膝を外反(X脚)に矯正します。骨切り部に強度の高い吸収性の人工骨を移植し、強固な固定性を持つロッキングプレートで骨切り部を固定します(OWHTO)。
    プレートの固定力が強いため、術後早期から体重がかけられ、術後2週程度で退院が可能です。
    骨切り方法には2種類あり、矯正角度の多少により手術方法を決定します。

  • 内側開大式高位脛骨骨切り術 OWHTO

    矯正角度が小さいもの(約10度以下)

    レントゲン写真

  • ハイブリッド外側閉鎖式高位脛骨骨切り術 Hybrid-CWHTO

    矯正角度が大きなもの(約11度以上)

    レントゲン写真

  • 遠位大腿骨骨切り術 Distal Femoral Osteotomy DFO

    外反型の変形(X脚)があり、比較的年齢が若く、活動性の高い(スポーツをする)、可動域良好で、高度な肥満ではない患者様が適応となります。
    大腿骨(太ももの骨)の遠位部を骨切りし、外反(X脚)となった膝を矯正します。強固な固定性を持つロッキングプレートで骨切り部を固定します。
    プレートの固定力は強いのですが、術後3~6週程度の荷重制限が必要です。

  • 人工膝関節全置換術 Total Knee Arthroplasty (TKA)

    内反外反、変形の程度、年齢、肥満を問わず対象となります。
    人工関節に置換すると、ほとんどの患者様で関節の痛みが取れるため、生活の質QOLの改善が見込まれます。
    術後早期から全体重をかけ歩行可能であり、術後2週程度で退院が可能です。
    膝関節は、大腿骨・脛骨・膝蓋骨(お皿の骨)の主に3つの骨で構成されている関節であり、人工関節はこの3つの骨の表面を人工物で置換する手術です。脛骨部品の関節面側にはポリエチレンの板をはめ込みます。ポリエチレンが軟骨の代わりとなります。
    膝の変形は左右とも同じように進みます。両膝が同じくらい痛いというのはよくあることであり、片方ずつTKAをすると、手術をした方の下肢は内反が矯正され真っすぐになりますが、反対側は内反したままであり、歩行に支障が生じリハビリがうまく進まない危険性があります。この場合当院では、同じ日に左右同時にTKAをしております。同時にすることにより左右ともに痛みがとれ術後のリハビリがうまく進み、ADLの改善が早くなります。
    リハビリ期間も片方だけ手術をした患者さんと大きく変わりません。

    レントゲン写真

  • 疼痛対策

    TKAは骨をたくさん切るため術後の痛みが強く大きな課題でしたが、現在は、術前から鎮痛薬の服用・麻酔科の協力のもと硬膜外ブロック・末梢神経ブロック(大腿神経チュービング・坐骨神経ブロック)等にて、術後の痛みは軽減しているようです。

  • 出血対策

    TKAは骨をたくさん切るため出血の多い手術です。出血が多くなると輸血が必要になります。輸血も感染症の危険があり、できれば避けたい治療法です。当院では、手術中に作製した骨孔をふさぐ・露出した骨を骨蝋で覆う・関節腔内に止血剤であるトラネキサム酸を注入する等の止血操作を行っており、同種血輸血の必要性はほぼなくなっています。

  • 人工膝関節単顆置換術 Unicompartmental Knee Arthroplasty (UKA)

    変形が内側・外側に限局しており、70歳以上、活動性が高くなく、肥満のない患者様に適応があります。
    膝関節内の2つの靭帯(前十字靭帯・後十字靭帯)が残るため、自然に良く曲がり、違和感も少ないといわれます。術後の疼痛も軽いです。
    薄いポリエチレン、体重がかかる脛骨部品が小さい等の理由により適応が制限され、当院の人工膝関節置換の20%ほどですが患者さんの満足度の高い手術の一つです。

    人工膝関節単顆置換術レントゲン写真

  • 前十字靭帯再建術 ACL Anatomical Double Bundle Reconstruction

    前十字靭帯ACLは膝の靭帯の中で最も断裂しやすい靭帯であり、一度断裂すると自然治癒はしません。放置すると膝が不安定になり、半月板・軟骨が傷み始めます。半月板が傷むと変形が進むため、ACLの再建が必要になります。当科では、太ももの裏側にあるハムストリングス(膝屈筋腱)の一部である半腱様筋腱を採取し、この腱から2本の移植靭帯を作製し、ACLを2重束に再建しています。
    術後は装具(ブレース)を装着し、荷重制限・可動域制限の範囲内でリハビリをし、術後2~3週ほどで退院となります。スポーツ復帰は症例により異なりますが、9~12ヶ月程度です。

    前十字靭帯再建術写真

  • 半月板

    半月板損傷に対して、以前は切除術が多く行われていましたが、半月板の荷重分散機能が知られてからはできるだけ切除は控え、半月板を温存することが重要となっています。
    当院でも、できるだけ半月板を温存するように切除術よりも縫合術が増えています。Fibrin clot(血液の固まった血餅)を断裂部に移植したりして半月板の治癒を高めるようにしています。
    半月板縫合後は、1~3週間の荷重制限・可動域制限が必要になります。松葉杖を使用し退院となります。