運動器理学療法研究室
Musculoskeletal Physiotherapy Laboratory

セミナー情報

関西医科大学運動機能セミナー

●日時/テーマ/講師

① 2026年6月7日(日)10:00~16:00
「身体運動学の基礎知識-筋の運動学とバイオメカニクス-」
市橋 則明(関西医科大学リハビリテーション学部 教授)

② 2026年6月21日(日)10:00~16:00
「高齢者の転倒リスクに対する科学的評価と転倒予防の実践」
浅井 剛(関西医科大学リハビリテーション学部 准教授)

③ 2026年7月5日(日)10:00~16:00
「バイオメカニクスと神経生理学的視点に基づく歩行トレーニングの介入戦略」
脇田 正徳(関西医科大学リハビリテーション学部 講師)

④ 2026年8月30日(日)10:00~16:00
「股関節の運動学と機能障害に対する理学療法」
八木 優英(関西医科大学リハビリテーション学部 講師)

⑤ 2026年9月20日(日)10:00~16:00
「関節可動域制限に対する運動療法-ROM制限因子の評価とストレッチングの実際-」
市橋 則明(関西医科大学リハビリテーション学部 教授)

⑥ 2026年10月11日(日)10:00~16:00
「脳卒中片麻痺の理学療法のエビデンスと歩行トレーニングの理論と実際」
市橋 則明(関西医科大学リハビリテーション学部 教授)

⑦ 2026年10月25日(日)10:00~16:00
「高齢者に対する筋特性・運動機能の評価と根拠に基づいたトレーニング」
池添 冬芽(関西医科大学リハビリテーション学部 教授)

⑧ 2026年11月29日(日)10:00~16:00
「筋力低下のメカニズムと筋力トレーニングの実際-廃用性筋萎縮予防と変形性膝関節症・Extension lag への応用-」
市橋 則明(関西医科大学リハビリテーション学部 教授)

⑨ 2026年12月13日(日)10:00~16:00
「脳卒中後の動作・歩行の評価と個別化トレーニング」
森 公彦(関西医科大学リハビリテーション学部 講師)

 

●主催: 運動機能研究会
●開催形式:オンライン開催(Zoomによるライブ配信)
●受講費:各7,000円 
●申込み方法:
下記URLまたはQRコードからGoogleフォームにアクセスし、必要事項を入力・送信してお申し込みください

https://forms.gle/NNvmww6mxt1rvtNV8

●申込締め切り:各テーマの日時の3週間前
●問い合わせ先:セミナー事務局 kanni.seminar.pt@gmail.com
*すべてZoomを利用したオンラインセミナーとなります。
*受講者には事前にセミナー資料(PDFファイル)を配信いたします。
*申込締めきり日以降に受講可否についてメールでご連絡いたします。
*申込締め切り日から1週間を過ぎても受講可否の連絡がメールにて届かない場合は、
 セミナー事務局(kanni.seminar.pt@gmail.com)にお問い合わせください。


●各テーマの内容

①「身体運動学の基礎知識-筋の運動学とバイオメカニクス-」
 解剖学や運動学の教科書には、各筋の作用が一義的に記載されている。しかし、関節角度や姿勢が変化すれば筋のモーメントアームは変動し、その結果として筋の作用も変化する。そのため、解剖学の教科書に書かれている筋の作用の単純な暗記だけでは、実際の評価・治療やトレーニング指導に十分に活かすことはできない。本セミナーでは、まず1.筋の運動学的作用―関節角度や肢位の変化に伴い、各筋の作用がどのように変化するのか―を解説する。あわせて、各筋のトルク寄与率(各筋が関節運動や関節トルクにどの程度貢献しているのか)について、基礎的な理論と具体例を用いて説明する。次に、2.モーメントの重要性、3.人体の「てこ」のとらえ方に関するよくある誤解、4.一関節筋と二関節筋の協調的な機能といった基礎バイオメカニクスのポイントを整理する。そのうえで、これらの知識を臨床場面にどのように応用するかとして、5.肩関節の運動学とトレーニング(モーメントアームの変化から検討した肩関節周囲筋の運動学的作用、肩関節の関節内運動、筋電図学的研究やMRIを用いた研究から検討した肩関節周囲筋の選択的筋力トレーニング、肩甲骨の運動学とトレーニング)、6.膝関節の運動学とトレーニング(膝関節の受動的制御、膝関節の能動的制御、膝関節の関節内運動、膝関節にかかる負荷とトレーニング、変形性膝関節症と筋質の関連)について紹介する。

②「高齢者の転倒リスクに対する科学的評価と転倒予防の実践」
 高齢者の転倒は、骨折や外傷を契機として要介護状態への移行を招く重要な健康課題であり、生活の質(QOL)を大きく損なう要因である。転倒は偶発的な事象ではなく、身体機能の低下に加えて、環境要因や心理的要因が相互に影響し合って生じる現象である。そのため、転倒予防には単一要因に着目した対応ではなく、包括的な評価と介入が求められる。本セミナーでは、地域在住高齢者と要介護高齢者を対象に、それぞれに特徴的な転倒リスク要因を整理する。筋力、バランス能力、歩行能力といった身体機能評価に加え、日常生活動作や活動量の特性を踏まえ、対象者の状態に応じた評価の視点と臨床上の留意点について解説する。また近年、転倒リスクを修飾する重要な因子として注目されている「転倒恐怖感(Fear of Falling)」も本セミナーの主要なテーマとして取り上げる。転倒恐怖感は、活動制限を介して身体機能の二次的低下を招き、転倒リスクをさらに高める悪循環を形成する。本セミナーでは、転倒恐怖感の概念整理、評価方法の考え方、ならびに臨床介入における位置づけについて説明する。さらに、超高齢社会における転倒予防戦略として、教育的介入の意義、住環境評価の視点、地域および施設で実施されている転倒予防プログラムの実践例を紹介する。科学的根拠に基づいた評価と介入を通じて、専門職が臨床および地域現場で活用可能な実践的知見を提供することを目的とする。

③「バイオメカニクスと神経生理学的視点に基づく歩行トレーニングの介入戦略
 理学療法において、歩行能力の向上は対象者の生活機能の再建に不可欠であり、移動手段の獲得は活動・参加の拡大や転倒リスクの軽減にも直結する重要な課題である。歩行障害は、疾患に起因する運動機能障害のみならず、感覚入力の変化や中枢神経系の再編成、さらには個々の代償・適応戦略の違いによって多様な様相を呈する。そのため臨床現場では、歩行速度や歩行自立度といった単一指標にとどまらず、歩行を構成する要素を多面的に捉え、画一的な介入ではなく、問題点を的確に評価したうえで個別性を重視した歩行トレーニングを選択・実施することが求められる。効果的な歩行トレーニングを行うためには、関節運動や身体重心軌跡などのバイオメカニクスの観点に加え、筋活動様式や協調性、タイミングといった神経生理学的制御の理解が不可欠である。本セミナーでは、歩行の運動学的・運動力学的制御および表面筋電図を用いた神経生理学的制御の視点から、脳卒中後の片麻痺歩行、高齢者にみられる歩行バランス障害、パーキンソン病におけるすくみ足の特徴を整理する。さらに、評価で得られた所見をどのように介入戦略へと結びつけるかという臨床推論の過程に焦点を当て、課題指向型練習、高頻度練習、難易度調整、フィードバックの活用、補装具や歩行補助具の選択などをどのように組み合わせるかについて、臨床場面での具体例を交えながら検討する。

④「股関節の運動学と機能障害に対する理学療法
 股関節は下肢における主要な荷重関節であり、その機能は歩行や階段昇降などの動作の質を左右する。従来の理学療法では外転筋・伸展筋の強化を軸としてきたが、骨形態、関節唇、関節包靭帯に加え、股関節周囲筋、特にiliocapsularisをはじめとする深層筋の機能解明が進んだことで、運動療法の選択肢が増えた。しかし、股関節の機能障害では局所組織の機能障害が複雑に連関し、さらに骨盤・体幹などの隣接部位の動態や荷重の影響も受けるため、評価の焦点化と治療の優先順位づけが難しく、漫然とした運動療法へと陥らせる原因となりやすい。本セミナーでは、最新の解剖学と運動学的な知見を中心に、関節構成体や周囲筋の機能、股関節の安定性について詳説する。さらに、動作時の全身的な特徴と股関節に生じる負荷についても言及する。これらを通して、股関節の機能障害が生じるプロセスやメカニズムを整理して解説する。特に、局所組織の詳細な機能と全身的な運動の評価を体系的に整理することで、評価や運動療法の焦点を明確にし、その具体的な評価・治療方法についてエビデンスを交えて紹介する。

⑤「関節可動域制限に対する運動療法-ROM制限因子の評価とストレッチングの実際-
 関節可動域制限に対して運動療法を実施する際に最も重要なことは、「関節角度(どの程度制限があるか)」ではなく、「ROM制限因子(何がROMを制限しているのか)」を明らかにすることである。単にROMを測定し、角度の大小を記録するだけでは真の意味での評価とは言えない。ROM制限因子を同定してはじめて、それに対応した具体的な治療戦略を立てることができる。本セミナーでは、まず、ROM制限因子を特定するための評価として、エンドフィール、2関節筋を考慮したROM測定、患者の主観的感覚について述べる。次にROM制限の8つの因子について、その鑑別のポイントと実際の治療法をセットで詳しく解説する。さらにストレッチングのエビデンスと実際として、1.ストレッチングが筋力に与える影響、2.パフォーマンスに与える影響、3.傷害予防に対する有効性、4.遅発性筋肉痛(DOMS)に与える影響に関して述べる。続いて、ストレッチングが柔軟性向上に与える影響に関して、エビデンスを概説しながら効果的なストレッチング方法に関して、超音波エラストグラフィーを用いた我々の最新の研究成果を紹介し、ストレッチング条件と組織の伸張特性との関係についてわかりやすく解説する。最後にビデオを供覧しながら肩関節と股関節を中心に実際のストレッチング方法を紹介する。

⑥「脳卒中片麻痺の理学療法のエビデンスと歩行トレーニングの理論と実際
 脳卒中片麻痺に対する理学療法では、アプローチの選択やトレーニング内容が経験や流派に依存しやすく、必ずしもエビデンスに基づいた介入が行われているとは限らない。本セミナーでは、脳卒中リハビリテーションに関する最新のエビデンスを踏まえ、歩行再獲得に向けた理学療法の考え方と具体的なトレーニング方法を整理することを目的とする。まず前半では、コクランレビューおよび Evidence-Based Review of Stroke Rehabilitation(EBRSR)を中心に、脳卒中片麻痺に対する各種アプローチのエビデンスを概説する。具体的には、立ち上がりトレーニング、体幹トレーニング、反復・課題志向型トレーニング、バランス訓練、歩行トレーニング、筋力トレーニング、ミラーセラピー、メンタルプラクティス、行動観察などについてのエビデンスをまとめて解説する。後半では、重度片麻痺患者が歩行を獲得するための歩行トレーニングの理論と実際に焦点を当てる。特に、立位保持、患側の支持性、患側下肢の振り出しという3つの能力が、麻痺が重度であっても歩行を可能にするための鍵となる点を強調し、それぞれの能力をどのように評価し、どのような方法と工夫でトレーニングしていくのかを具体的に示す。これらの内容は、実際の患者ビデオを数多く供覧しながら、ケースに応じた目標設定と介入の組み立て方がイメージできるようになるべく具体的に紹介する。

⑦「高齢者に対する筋特性・運動機能の評価と根拠に基づいたトレーニング
 高齢者の健康寿命延伸を図るためには、予防の視点も含めた積極的かつ多角的なアプローチを展開することが求められる。加齢に伴い、筋力、歩行・姿勢制御能力、敏捷能力といった様々な運動機能や筋量・筋の質(筋内の脂肪・結合組織の割合)といった筋特性が変化する。本セミナーではこのような加齢による運動機能や筋特性の変化について概説し、信頼性・妥当性が高いとされている高齢者の運動機能評価法、超音波エコーを用いたサルコペニアや筋特性の評価法、予防の視点からみた高齢者の運動機能の基準値、転倒リスクのスクリーニングとして有効な評価法などについて述べる。高齢者に対する運動療法については、様々なガイドラインやシステマティックレビュー・メタアナリシス、研究報告を紹介しながら、高齢者に対する運動トレーニング・身体活動に関するエビデンスや転倒予防対策およびサルコペニア・フレイル予防対策、運動の多様性と継続の重要性について解説する。また、高齢者に対する運動療法の基礎理論および運動処方のポイント、低強度筋力トレーニングやバランストレーニングの具体的な実践方法、高齢者の筋機能・運動機能や活動性向上に有効なトレーニング法について紹介する。以上の内容について、高齢者研究の最新の知見を踏まえながら解説し、高齢者に質の高い運動療法を提供できるようになることを目指す。

⑧「筋力低下のメカニズムと筋力トレーニングの実際-廃用性筋萎縮予防と変形性膝関節症・Extension lag への応用-
 筋力低下に対する運動療法は、理学療法において最も重要なテーマの一つである。本セミナーでは、筋力低下への理解と筋力トレーニングの位置づけを整理し、廃用性筋萎縮の予防や変形性膝関節症・Extension lag への実践的応用につなげることを目的とする。まず、1.筋力に影響する要因として、筋張力にかかわる構造的要因(筋断面積、羽状角、筋線維長、筋輝度、弾性率)と神経的要因(大脳の興奮水準、痛みによる抑制)を整理する。次に、2.筋力低下の原因として、主動作筋の神経的要因、筋萎縮、主動作筋以外の問題に分け、その特徴とトレーニング方法を解説する。さらに、3.筋力増加のメカニズムとして、構造的要因と神経的要因に分けて説明する。続いて、4.筋力の評価では、OKCとCKCに分けて説明するとともに、筋力発生率(RFD)や Force steadiness(一定の筋力を維持する能力)の評価についても述べる。5.筋力トレーニングの原則では、過負荷・特異性・バリエーションの原則を解説する。さらに、6.筋力トレーニングのエビデンスとして、筋質向上に有効なトレーニングや伸張性トレーニング、ストレッチングが筋力に与える影響を紹介する。そのうえで、7.廃用性萎縮防止トレーニングとしての高頻度トレーニングや自転車エルゴメーターの重要性、8.変形性膝関節症に対するトレーニングでは筋力トレーニングのエビデンスを示し、9.Extension lag の原因(内側広筋が主因ではない)とそのトレーニング方法について解説する。

⑨「脳卒中後の動作・歩行の評価と個別化トレーニング
 起居動作や移動動作は日常生活の基盤であり、脳卒中後にこれらが障害された場合の再建は、ADLの自立度を高める上で非常に重要である。動作には、単なる運動機能だけでなく、感覚、体幹機能、そして自己と外界の鉛直方向の知覚と制御(垂直性)などのバランスの構成要素が密接に関与し、半側空間無視をはじめとする高次脳機能の影響も考慮する必要がある。特に、体幹機能はバランス、歩行、ADL能力と強く関連しており、直立姿勢や動的姿勢制御の改善には、運動力学的および神経生理学的視点が不可欠である。リハビリテーション(リハ)では、「このトレーニングを行えば、この効果が得られる」という画一化された方法だけでは、複雑な動作障害に対して十分な効果が得られないことが少なくない。そのため、我々リハ専門職には、「期待する結果(効果)から原因を推測し、動作を最適化する」という、臨床知に基づく個別化されたリハ戦略の構築が求められる。本セミナーでは、動作・歩行再建に必要な運動学・運動力学・神経生理学を整理し、座位・起立再建から歩行再建に至る具体的な評価と個別化トレーニングのポイントを解説する。特に、体幹機能や垂直性の評価と、それらを踏まえた傾斜姿勢や半側空間無視を伴う症例へのアプローチに展開する。さらに、下肢装具やロボットを活用したトレーニングの標準化と個別化について議論し、機械学習手法を用いて、治療効果の高い患者群の特定や、治療の標的となる運動学的・運動力学的パフォーマンスの決定を行うなど、データ駆動型の新しいリハ戦略の展開についても解説する。