■カテーテル留置術

PD治療を行うには、透析液を腹腔内に出し入れできるように、「カテーテル」と呼ばれる管を腹部に埋め込む手術が必要です。カテーテルはやわらかいシリコンで出来ており、一度埋め込まれたカテーテルは、感染などの合併症が起こらない限り半永久的に使用する大切な管です。

■カテーテルの先端と出口部の位置

カテーテルの先端は、直腸と膀胱の間にある「ダグラス窩」に留置します。
これは、ダグラス窩が腹腔内の一番低い位置にあり注液・排液を容易にさせるためです
カテーテルが腹部から外に出る部分を「出口部」と呼びます。下腹部を中心に上腹部や前胸部、背部への作成が可能です。患者様の生活スタイルに合わせ支障のない位置を手術前に決めておきます。(出口部マーキング)

■出口部位置決定(マーキング)のポイント

①挿入部位とカテーテル出口部が日常生活に支障がない。
②出口部ケア(洗浄や消毒)がしやすく直視可能。
③ベルトや衣服に圧迫されない。
④体位変化(仰向け・座位・立位)による支障がない。
⑤腹部の手術痕以外の場所。
⑥入浴パックが装着可能な位置。


これらに注意して入院前にマーキングを行うことがポイントです。(看護師により実施)手術前にマーキングを実施しすることで、カテーテルが入っているイメージができ、日常生活を送る上で不便な部分は修正することで、もっとも良い出口部の位置決定が可能となります。

■カテーテルの種類

カテーテルの材質はシリコンで、注排液がスムーズに行えるように先端部の10cm範囲内に多数の側孔があります。カテーテルの先端部はダグラス窩に置かれます。
中間にはカフと呼ばれるダクロンフェルトがあり、外部カフは皮下に固定、内部カフは腹筋膜に固定することで、組織と癒合されます。

①スワンネック型
皮下埋没部分の屈曲度にはさまざまな種類がある。両端を下向きにすることで復元力が働かなくなりカテーテル位置異常が起こりにくい。

②テンコフストレート型
ロングタイプでどんな体格でも合わせやすい。3カフタイプもあり、バリエーションが豊富。

③カール型
腹腔内でカテーテル先端の位置移動と注排液障害が起こりにくいという長所があるが、位置異常の際、修復困難という欠点を持つ。

■待機的(導入より前)にチューブを挿入する方法

従来の腹膜透析の手術ではカテーテル挿入術を行って、すぐにCAPDを開始する方法がとられていましたが、近年、カテーテルの埋没とカテーテルの取り出しを2期に分けて段階的に行うSMAP(スマップ:Stepwise initiation of PD using Moncrief And Popovich)法が行われるようになりました。SMAP法は比較的導入までに余裕のある場合に選択され、従来法と比較して以下のようなメリットがあります。

SMAP法の利点

●カテーテルがあらかじめ埋没されているので、必要な時期に透析が開始できます。

●埋没期間中に手術創が治癒することで、感染症などが少なくなります。

●透析導入を計画的に行えるので、患者様の生活・仕事など考慮した入院ができます。

●入院期間が短縮できます。