腹膜とは
■腹膜とは
腹膜は、人工膜と異なり生体膜で、お腹の中にあり、肝臓・胃・大腸・小腸など内臓の表面を覆っている膜です。全体を広げるとその表面は約1.7~2.0㎡程(たたみ一畳分)で、ほぼ体表面積の広さがあります。体表面積とは、体の表面の総面積のことです。腹膜は半透膜になっており、細い血管が網の目状に無数に走っています。 (図1)
図1 腹膜の構造
■腹膜の構造
腹膜はきわめて薄い膜で1層の中皮細胞層と、その下のゆるやかな結合組織層(間質)からなります。
■腹膜の働き
腹部臓器の動きを滑らかにし、保護する作用があります。また生体膜として浸出、漏出、分泌などの生理作用があります。腹腔腔には約50~100mlの液があり、これが潤滑油的な働きを果たすと同時に感染時の防御機構となっています。
■腹膜の毛細血管・リンパ管・中皮細胞について
■腹膜透析液による腹膜劣化と腹膜機能検査について
腹膜透析液は高濃度のブドウ糖とミネラルで組成されています。ブドウ糖は短期的には人体に影響はありません。しかし、腹膜がブドウ糖に繰り返しさらされると糖尿病による血管障害に類似した変化が腹膜に生じ、腹膜が劣化してきます。
腹膜の機能が変化すると除水能力が低下したり、腹水が出現することがあります。さらに形態学的にも変化してくると腹膜が腸管と癒着し、腸閉塞を起こすことがあります。(被覆性硬化性腹膜炎 EPS参照)
腹膜の状態は一人ひとり異なり、腹膜透析を続けている期間によって変化するため、腹膜平衡試験(PET)によって腹膜の機能を定期的に評価することが必要です。腹膜透析を行うための機能は十分か、期間ごとにどのように変化しているのかを評価し、腹膜休息や血液透析の併用を含めた透析治療の方法の検討に役立てます。