腹膜炎
■腹膜炎
腹膜炎は難治化するとPD 中止を余儀なくされるため、PD治療の継続を左右する重要な合併症です。実際に腹膜炎は、腹膜透析から血液透析への移行の原因の30% を占めています。 したがって早期発見・早期治療が大切で、普段から起こさないための予防策を身につけておくことが大切です。
【原因】
① 経カテーテル バック交換手技、操作上のミスによるもの
② 傍カテーテル 出口部感染によるもの(カテーテルのトンネル感染)
③ 腸管炎症の波及
(注) トンネル感染 腹腔内に留置したチューブが腹膜外軟部組織へ抜け出てから、表皮出口部まで突き抜けるまでの間で、腹部の皮下組織内を走るトンネルの部分。
【症状】 ① 排液混濁(図1) ② 腹痛 ③ 発熱 ④ 吐き気 ⑤ 下痢 |
注意1 ただし腹痛を伴わず倦怠感のみで、自覚症状に乏しい場合もあります。
また発症前に排液中にフィブリン(白い糸状の浮遊物)を認めることもあります。
注意2 また腹膜炎以外でも排液混濁を起こすことがあります。(表1)
表1.腹膜炎以外の排液混濁
排液の性状 | 原因 |
血性の場合 | 月経、排卵時など(図2) |
白く濁っている場合 | 脂肪分の多い食事によるもの(乳び) |
内服薬(Ca拮抗剤)によるもの |
【腹膜炎の診断】
① 腹痛を伴う排液混濁
② 排液中の白血球数が100個/L以上(好中球50%以上)
③ グラム染色培養による菌の検出
起炎菌としては、グラム陽性球菌が多く、なかでも黄色ブドウ球菌が過半数を占め、ついで表皮ブドウ球菌や緑膿菌が多い。
【治療方法】
多くの場合は抗生物質を投与により、1~2週間の治療で軽快します。しかしなかには腹膜炎が難治性で腹膜透析中止を余儀なくされる場合もあります。カテーテル出口部が感染が続く場合は、カテーテルを交換、あるいは抜去することがあります。
日頃から排液の性状に注意して、「おかしいな・・・」と感じたら、早めに病院へ連絡することが必要です。