肝炎・肝硬変・肝がんの早期発見と患者さんに対する的確な治療方針の決定には、肝臓病診療の専門的な医療機関とかかりつけ医との連携は必須です。しかし従前の診療体制では不十分なこともあり、それぞれの役割に応じた診療ネットワークを形成することが急務であり、国家的プロジェクトとして、各都道府県に肝疾患診療連携拠点病院を選定し、当該病院を拠点として他の専門医療機関およびかかりつけ医と連携しながら患者さんに良質な医療を提供するためのネットワークを構築しております。
関西医科大学総合医療センター(旧関西医科大学附属滝井病院)は2008年7月10日付で、大阪府の推薦に基づき、厚生労働省の設置許可をへて、大阪府内5カ所の肝疾患診療連携拠点病院の1つとして指定され、主に北河内医療圏を担当しており、また拠点病院としての事業を円滑に遂行するため2009年3月1日より当院内に肝臓病センターを設置しております。
肝臓病センターは、関連各科が協力して行う、肝疾患診療および研究に対する支援のほか、拠点病院として、院内外の医療従事者や地域住民を対象とした研修会や講演会などの開催、肝疾患に関する相談、肝疾患に関する専門医療機関との連携の場を設定することを目的として活動をしております。
わが国における肝がん患者数は2018年で3万8千人と報告されています。また死因の第1位は悪性新生物ですが、肝がんは肺がん・胃がん・結腸・膵臓がんについで多く、肝がんによる死亡者数は年間2万4千人(2020年)に及んでいます。肝がんの大部分が慢性肝炎・肝硬変などの慢性肝疾患から発生しますが、その原因の65%がC型肝炎ウイルス・15%がB型肝炎ウイルスによるものです。従って、慢性C型肝炎および慢性B型肝炎患者さんに対する的確な治療が肝がん発生の抑止につながります。また近年、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis, NASH)などC型肝炎ウイルスあるいはB型肝炎ウイルスとは関連しない肝臓病からの肝発癌の割合が増加傾向にあります。今後は肝炎ウイルスとは関連しない肝臓病に対しても、より一層の取り組みが必要です。肝がん治療についても種々の治療法が開発されており、早期に発見されれば患者さんにとって負担の少ない治療が施行可能となっています。
早期発見・早期治療はどのような疾病にも共通することですが、肝臓病においても、肝疾患診療連携拠点病院、専門医療機関およびかかりつけ医との連携を基軸としたネットワークの活用が肝炎・肝がんの早期発見・治療につながり、肝がん多発地域である大阪府内において肝炎の治癒・肝がん撲滅に寄与することを祈願しております。
死亡率:肝がん、男性は5位、女性は6位。
西日本は男女とも肝がんによる死亡者数が多い。
特に大阪府、兵庫県、広島県、福岡県などは肝がんの多発地域です。
資料 : 国立がん研究センター がん対策情報センター
Source : Center for Cancer and Information Services,National Cancer Center, Japan