関西医科大学総合医療センター

1.診療部長挨拶

さまざまな痛みで悩んでおられる患者さんは、非常にたくさんおられます。その原因や病態はさまざまで、治療法も異なります。ペインクリニック(痛みの診療 科)は、専門的に痛みの診断と治療を行いますが、患者さんごとに痛みの適切な治療法を検討、実施します。主な治療手段である神経ブロックは、注射によって 局所麻酔薬や少量のステロイドなどを神経に作用させます。その結果、痛んだ組織の血流が増加し、神経の炎症や過敏状態が改善します。神経ブロックを定期的 に行うことで、その効果を積み重ねて痛みを治していきます。
当科の特徴の1つとして、癌の痛みに対する新しい治療法があります。それは「くも膜下ステロイド投与法」という方法で、脊髄の近くに少量のステロイドを注入します。脊椎転移などの強い痛みに優れた鎮痛効果があります。
ペインクリニックの受診をご希望の方は、かかりつけの先生に紹介状を書いてもらい、外来で予約していただくようにお願いします。

診療部長 村尾 浩平

2.科の特徴

ペインクリニックは、麻酔科の「専門的な痛みの治療部門」です。さまざまな痛みの診断と治療を行っており、神経ブロックや薬物療法などで治療します。主 な治療手段である神経ブロックは、注射によって局所麻酔薬や少量のステロイドなどを神経に作用させますが、細い針でていねいに行います。血流が増加と神経 過敏性の抑制によって、痛みが徐々に和らいでいきます。

 対象となるのは、癌による痛み、腰や下肢の痛み(椎間板ヘルニア、変形性脊椎症など)、首や腕の痛み(頚椎症、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎など)、顔面 の痛み(三叉神経痛)、血流障害による手足の痛み、外傷後の痛み、手術後の痛み、帯状疱疹後神経痛、内臓痛、原因不明の難治性疼痛などです。

 外来では、診断・治療のための診察や検査を行ったのち、多くの場合まず週に1回の神経ブロックにより治療を開始します。神経ブロックの定期治療で、治療 効果を積み重ねていくことになります。種類としては、硬膜外ブロック、星状神経節ブロックが多いのですが、くも膜下ブロック、肩甲上神経ブロック、肋間神 経ブロック、頚神経叢ブロック、腕神経叢ブロック、傍脊椎神経ブロック、局所静脈内ブロックなども用います。難治性の痛みには、抗けいれん薬、抗うつ薬な どが有効な場合があり、神経ブロックと薬物療法を組み合わせて治療することがあります。

 入院治療としては、カテーテル留置による持続硬膜外ブロック、神経根ブロック、三叉神経ブロック、交感神経節ブロック、腹腔神経叢ブロックなどを行って います。痛みの種類や疾患によっては、神経破壊薬(アルコールやフェノールなど)による神経ブロックを選択する場合もあります。  

 最近、痛みの成り立ちや薬物の効果について多くの研究成果が得られており、新しい治療法も開発されています。当科では約10年前から、癌性疼痛の新しい 治療として「くも膜下ステロイド投与法」を実施しています。脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)と同様の方法で、脊髄の近くに少量のステロイド(リンデロン)と 生食水を注入します。癌の脊椎転移による強い痛みなどに対して、約100名の方に安全性と治療効果を確認しながらこの治療を行ってきましたが、安全で優れ た鎮痛効果が認められています。

 現在、麻酔科医の減少と手術麻酔の増加によってペインクリニック診療に従事する麻酔科医が非常に少なくなっています。そのような状況下で、さまざまな診療科から痛みの患者さんの紹介を受けており、ペインクリニックの診療をなるべく円滑に行う為に、初診の方も含めて全予約制と しています。かかりつけ医から紹介状をもらい、ペインクリニック外来の受付で予約をお願いします。予約時間は外来に来ていただく時間であり、実際の診療は 患者数や治療法などにより遅れることがあります。また神経ブロックを受けたあとは、15~45分のベッド上での安静時間がありますので、時間には余裕を もってお越し下さい。 
ペインクリニック以外に麻酔科の重要な役割として、手術を受けられる患者さんの麻酔があります。麻酔科医は、患者さんが安心して手術を受けられるように、術中から術後にわたって痛みやストレスを取り除き、手術・麻酔の安全を確保します。手術中、ずっと患者さんのそばに立ち会って全身状態をチェックし、麻酔管理の技術を駆使して全身管理を行います。すなわち、麻酔科医は手術室の中で、手術患者さんの安全を守る役目を担っています。