挿管困難と分離肺換気

挿管困難患者における分離肺換気の適応戦略

分離肺換気に使用するダブルルーメンチューブ(DLT)やユニベント®チューブは通常の気管チューブより硬いので挿管が難しい.挿管困難患者の場合にはさらに難しくなる.一方で挿管困難患者であっても手術によっては分離肺換気が必要とされることもある.従って挿管困難の場合にどのように分離肺換気を行うかに関しては常にその戦略を持っておく必要がある.
図1は筆者が作成した挿管困難患者にどのようにして分離肺換気を適応するかに関しての戦略をフローチャートにしたものである.

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[図1] 挿管困難患者への分離肺換気の適応戦略

まず,手術によって分離肺換気が絶対的適応である場合から相対的適応(優先度高〜優先度低)まで様々であることを考え,分離肺換気なしで手術が行えるなら術者と相談の上で分離肺換気を諦めるのが賢明である.

次のステップは,DLTが必要かどうかという点である.もしも気管支ブロッカー(BB)で対応できる手術であれば通常の気管チューブと単体のBBを組み合わせて使用するようにすればよい.この場合,挿管困難に対応する方法は通常の挿管困難への対応と同一で良い.

さらに次のステップは,経口挿管が可能かどうかの判断である.最終的にDLTを挿管するのであるから,DLTが口から咽頭喉頭を通って気管まで進められるだけの空間があるかどうかである.挿管困難であるが,DLTが通るだけの開口が可能であるなら,一度通常の気管チューブをなんらかの方法で気管挿管し,その後SLT→DLTのためにチューブエクスチェンジャーを使用する.現在COOK社が11Fr及び14FrのDLT用のチューブエクスチェンジャーを販売している.使用するにはいくつかのコツが必要であるが,これを用いて入れ替えると良い.このチェンジャーはHFJVを行うためのアダプターが付属しているので,入れ替えに難渋した場合にはHFJVを適応して酸素化を維持しても良い.

もしも経口挿管が困難でDLTが必須の場合には気管切開を行なった上でDLTを使用するしか方法がないだろう.過去の症例報告で28FrのDLTを経鼻挿管して使用したというものがあったが,28Frは細いFOBしか通らず,また気道抵抗も高いのでお勧めできる方法ではないと筆者は考えている.なお,気管切開口からDLTを使用する場合にはRusch社製のTracheoPartというチューブを利用すると良い.もちろん固定に工夫は必要だか,Bronchocathなどの通常のDLTを気管切開口から入れて使用することも可能である.


参考文献

  1. Hagihira S, Takashina M, Mori T, Yoshiya I. One lung ventilation in patients with difficult airways. J Cardiothorac Vasc Anesth 1998;12(2):186-8