気道管理マニュアル

はじめに

ここでは気道確保困難への対応および呼吸器外科麻酔における気道管理について解説する.

呼吸器外科の手術では麻酔科医が管理する呼吸器が手術対象となるため,術中は手術操作を妨げないように呼吸管理を行う必要がある. このために肺の手術では健側肺のみを換気する分離肺換気を行うのが一般的である.特に近年では低侵襲手術として胸腔鏡下手術(VATS; video-assisted thoracoscopic surgery)が一般化しておりVATSでは分離肺換気が必須となっている.
また,気管や気管支の切除や形成など大気道に手術操作が及ぶような場合には高頻度ジェット換気(HFJV; high-frequency jet ventilation)などが必要になることもある.どうしても換気が困難になる場合には心臓外科のサポートの元に人工肺(ECMO; extra-corporeal membrane oxygenator)や経皮的心肺補助(PCPS; percutaneous cardio-pulmonary support)などを使わなければならないこともある.呼吸器外科麻酔では呼吸をサポートできるあらゆる手段の知識と経験を必要とする.

また,近年では胸部食道癌手術の胸腔内操作を腹臥位人工気胸下に行う方法も行われれるようになってきているが,この場合にはシングルルーメンチューブを用いた換気を行いながら術側の胸腔内に二酸化炭素を送付することで肺の虚脱を得て術野を確保している.小児の胸腔鏡手術においても同様の方法で胸腔内手術や肺切除術が行われている.これらについても解説したい.